日本脳卒中データバンク事業と日本脳卒中協会・日本脳卒中学会との連携について
日本脳卒中データバンク(JSDB)は、全国規模で脳卒中患者に関する詳細な臨床情報を収集・解析することにより、脳卒中医療の質の向上とエビデンスの構築に寄与することを目的とした、わが国を代表するデータベース事業です。その歴史的背景には、日本の脳卒中研究の系譜と、それを支える専門学術団体および患者支援団体との緊密な連携があります。
1999年には、厚生科学研究費による全国規模の急性期脳梗塞個票登録研究「J-MUSIC」(主任研究者:山口武典国立循環器病研究センター[国循]名誉総長)が実施されました。これを受けて、1999年から2001年にかけて、JSDBの前身にあたる「Japan Standard Stroke Registration Study(JSSRS)」(主任研究者:小林祥泰島根大学前学長)が行われ、当時としては画期的なコンピュータベースの臨床情報登録システムが開発されました。この成果をもとに、研究終了後も継続的な運用が決定され、2002年より公益社団法人日本脳卒中協会の「脳卒中データバンク部門」としてJSDBの運営が本格的に開始されました。
その後、JSDBを我が国のナショナルデータベース(National Stroke Registry)としてさらに発展させるため、2015年には日本脳卒中協会から国循へ運営が正式に移管されました。この移管時にJSDBの運営委員長を務めたのが、現在の日本脳卒中協会理事長である峰松一夫国循名誉総長です。峰松先生の尽力により、データバンク事業の公的かつ中立的な運営体制が確立され、現在も日本脳卒中協会との協力体制のもとで事業が継続されています。JSDBの活動内容や成果は、日本脳卒中協会が発行するJSA Newsにも毎号掲載されており、市民への情報公開および啓発の貴重な機会となっています
また、日本脳卒中学会との連携も積極的に図られており、学会の理事、幹事の先生方にもJSDB運営委員としてご参画いただいています。現在の日本脳卒中学会理事長である藤本茂自治医科大学教授にも、JSDB運営委員として継続的にご参加いただいており、学会とデータバンクの橋渡し役として重要な役割を担っていただいています。
今後も、JSDBは単なる症例登録研究にとどまらず、政策提言や診療指針の策定にも資する「医療基盤」としての役割を果たすことを目指します。そのために、日本脳卒中協会および日本脳卒中学会との連携を一層強化し、エビデンスの創出と臨床応用の好循環を継続的に推進してまいります。